けんちょんの数学・情報・教育探検記

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OMC 164 E 問題 (青色, 400 点)

まず「有限個になるの!?」って見た目が面白かった!

問題

以下の条件をともにみたす正整数  n の総和を求めてください:

  •  n 以下の正の整数であって、 n を割った余りが  1 であるものが、ちょうど  2 個存在する
  •  n 以下の正の整数であって、 n を割った余りが  2 であるものが、ちょうど  22 個存在する

 

考えたこと:条件の言い換え

問題文を見た瞬間に思ったのは「有限個になるの!?マジで!?」という感じでしたね。

なにはともあれ考察を深めていきましょう。まず、最初の条件を言い換えます。

正の整数  x n を割った余りが  1 である
 \Leftrightarrow  x \ge 2 かつ  x n-1 の約数である

となることから、最初の条件は「 n-1 の約数がちょうど  3 個である」と言い換えられます。 n-1 の約数は  1 も含めると  2 + 1 = 3 個であるということです。

同様にして、後者の条件は、以下のいずれかに言い換えられます。

  •  n-2 が偶数であるとき: n-2 の約数がちょうど  24 個 ( 1, 2 も含める)
  •  n-2 が奇数であるとき: n-2 の約数がちょうど  23 個 ( 1 も含める)

 

素因数分解を元にした考察を進める

約数がちょうど 3 個である数とは、素数  p を用いて  p^{2} と表せる数のことですね。よって、素数  p を用いて


n = p^{2} + 1

と表せます。 p = 2 は明らかに後者の条件を満たさないので、 p は奇素数です。よって、 n-2 は偶数にしかなりませんので、後者の条件は

 n-2 の約数がちょうど  24 個」

となります。約数が  24 個という条件はなかなかに厄介ですね。要領よく探索したいところです。

さて、 n = p^{2} + 1 であることから、 n-2 = (p+1)(p-1) と表せます。ここで、よくある議論ですが、次のことが言えます。


 p が奇数であるとき

  •  \mathrm{ord}_{2}(p+1) = 1, \mathrm{ord}_{2}(p+1) \ge 2 であるか、 \mathrm{ord}_{2}(p+1) \ge 2, \mathrm{ord}_{2}(p+1) = 1 であるかのいずれかである
  •  \frac{p+1}{2} \frac{p-1}{2} は互いに素である

この先、これらの知見が大活躍します!

 

約数が 24 個という条件をうまく扱う

それでは、 (p+1)(p-1) の約数が  24 個であるための条件を絞りましょう。

まず、上の議論から、 (p+1)(p-1) は最低でも  2^{3} で割り切れることがわかります。このことから、次の場合に分けられます。ここで、 q, r素数としています。

  • Case 1: (p+1)(p-1) = 2^{3} q^{5}
  • Case 2: (p+1)(p-1) = 2^{3} q^{2} r
  • Case 3: (p+1)(p-1) = 2^{5} q^{3}
  • Case 4: (p+1)(p-1) = 2^{5} qr
  • Case 5: (p+1)(p-1) = 2^{11} q
  • Case 6: (p+1)(p-1) = 2^{22}

順に調べていきましょう。結構腕力を問われる問題ですね!

Case 1: (p+1)(p-1) = 2^{3} q^{5}

 \frac{p+1}{2} \frac{p-1}{2} が互いに素であることから、次の 4 パターンに分かれます。

  •  p+1 = 2^{2}q^{5}, p-1 = 2
  •  p+1 = 2^{2}, p-1 = 2q^{5}
  •  p+1 = 2q^{5}, p-1 = 2^{2}
  •  p+1 = 2, p-1 = 2^{2}q^{5}

 q \ge 3 であることを踏まえると、いずれも不適です。

Case 3: (p+1)(p-1) = 2^{5} q^{3}

Case 2 は恐らく本命 (直観により) なので、先にダメそうな Case 3 を片付けることにしました。

実際、Case 1 とほぼ同様に不適であることがわかりました。

Case 5: (p+1)(p-1) = 2^{11} q

同様に不適です。

Case 6: (p+1)(p-1) = 2^{22}

明らかに不適です。

Case 4: (p+1)(p-1) = 2^{5} qr

Case 2, 4 が残ったのですが、Case 4 の方が対称性から楽できそうという理由から、先に Case 4 をやりました。

この場合は、次のいずれかになります。

  •  p + 1 = 2^{4}q, p - 1 = 2r
  •  p + 1 = 2q, p - 1 = 2^{4}r

ここで一瞬途方に暮れたのですが、「3 つの素数が式で結ばれている」という状況から、「 p, q, r のいずれかは  3 になるのではないか」という直観が働きました!

きちんと示しましょう。 \mod 3 で考えてみます。

 p = 3 の場合は明らかに不適なので、 p 3 で割った余りは  1 または  2 としてよいです。よって、 p + 1, p - 1 のいずれかは  3 の倍数となります。

つまり、 q = 3 または  r = 3 が成り立つのです!!!

それを踏まえて、 p, q, r素数になるパターンをすべて求めると、


(p, q, r) = (47, 3, 23)

が得られます。

Case 2: (p+1)(p-1) = 2^{3} q^{2} r

この場合は、次のいずれかになります。

  •  p + 1 = 2^{2}q^{2}, p - 1 = 2r
  •  p + 1 = 2^{2}r, p - 1 = 2q^{2}
  •  p + 1 = 2q^{2}, p - 1 = 2^{2}r
  •  p + 1 = 2r, p - 1 = 2^{2}q^{2}

パターンが増えましたが、Case 4 と同様に、 p 3 ではないとしてよくて、 q = 3 または  r = 3 となります。

 p, q, r素数になるパターンをすべて求めると、


\begin{align}
(p, q, r) &= (37, 3, 19) \\
(p, q, r) &= (19, 3, 5)
\end{align}

が得られました。

 

まとめ

以上をまとめると、 p = 19, 37, 47 という  3 個の解があります。それぞれ、 n = p^{2} + 1 より、


n = 362, 1370, 2210

と求められます。答えは、この総和である  3942 です!

 

感想

 q = 3 または  r = 3 が導かれる瞬間の快感はやばいですね!

個人的には次の問題を思い出しました。


 p, p + 2, p + 4 がすべて素数となるような正の整数  p の値をすべて求めよ。


これも  \mod 3 で考えることで綺麗に解けます。