これまた面白かった!
平方剰余に関する複雑な議論などするのかなと思ったけど、そんな必要はなかった。
問題
素数 について、次の条件を満たす 以上 以下の整数の組 の個数を で割ったあまりを求めてください。
(条件) を満たす整数 が無限個存在し、それらが等差数列をなす
考えたこと
さあ、2 次の合同方程式 を頑張って解いていきましょう!
まず、最初に思ったことはこんな感じでした (これ以降、 を省略します)。
- 1 次の合同方程式 なら簡単に解けるぞ。しかも であるならば、解は となって、等差数列になっているね!
- 問題として出題されている以上は、きっと であっても、解が等差数列をなすことがあるのだろう......!
これを踏まえて考察を深めていきます。その前に、一旦 の場合を片付けておきましょう。
- のとき
- のとき:任意の整数 で解をもつ ( 通り)
- のとき:解なし
- のとき
- 任意の に対して となる ( 通り)
つまり、 の場合については、 通りです。
2 次方程式を解く!
ここから先は、2 次方程式 を実際に解くつもりで考察を深めていきましょう。 なので、両辺に をかけて、
となります。ここで、 はなんだろう......となった方は、逆元という概念についてぜひ調べてみてください。平たく言えば、素数を法としたあまりの世界では、普通の有理数と同じように「足し算」「引き算」「掛け算」「割り算」ができるということです。
そして、さらに上の式を平方完成しましょう。普通の 2 次方程式の解の公式を導くのと同様の手続きです。
となります。
ここで、平方剰余に関する知見があれば、次のことが直ちにみて取れます!
- Case 1: のとき、解は と書ける
- Case 2: で が を法として平方剰余であるとき、1 つの平方剰余を と表すこととすると、解は と書ける
- Case 3: で が を法として平方剰余でないとき、解なし
本当に 2 次方程式の解の公式のような結果になりましたね!
である場合は、解の個数は を法として 1 個となります。
である場合は、解なしであるか、解の個数が を法として 2 個であることになります。
解が等差数列をなすためには......!
ここで重要な考察をします。まず大前提として、一般に整数係数の の多項式を としたとき、合同方程式 の解は
の形で書かれます。なぜなら、 が成り立つならば、 が成り立つからです。
ここで、 は素数であることから、解が等差数列になるパターンは限られることに注目します。
簡単のため、 としてみましょう。このとき、合同方程式の解が等差数列をなすようなパターンは
- 解が となるパターン ()
- 解が「すべての整数」となるパターン
の 2 つしかありません!
たとえば、 の様子を図示すると下図のようになります。
決して等差数列とはならないことが見て取れるでしょう。
一応きちんと示しておきましょう。合同方程式 の解が等差数列になるとき、その周期を とします。このとき、 は の約数になります。 は素数なので、 のいずれかとなります。
個数を求める
ここまで来れば、いよいよこの問題を解くことができます!
の解が無限個存在し、等差数列をなすための必要十分条件は、以下のいずれかが成り立つことです。
- である ( 通り)
- かつ である ( 通り)
- かつ である
最後の 3 番目の場合について、個数を求めましょう。
である を 1 つ固定すると、任意の に対して、 の値は と 1 つに決まります。よって、 通りです。
まとめると、求める個数は 個となります。
詰め
最後に、 として、 を求めます。
を で割った余りをそれぞれ求めて、中国剰余定理を適用して求めることにしましょう。
で割ったあまり
Fermat の小定理より、 なので、 です。よって、
で割ったあまり
Fermat の小定理より、 なので、 です。よって、
です。
中国剰余定理
求める値は、 で割ったあまりが であることから、求める値は と表せます。 の値を求めましょう。
となります。
よって、求める値は です!!
感想
楽しい問題でした!!
特に、「 を満たす整数 が無限個存在し、それらが等差数列をなす」という条件に対して、必要十分条件を求める部分は、数学的考察を進める実感が得られて楽しいですね。
意外と、今までの人生で、 における 2 次方程式を解いたことはありませんでした!!