けんちょんの数学・情報・教育探検記

数学・情報・心理・教育など色々なことを書いていきます!

OMC 164 C 問題 (青色, 300 点)

面白い問題でした。京大の入試問題などにもありそうな雰囲気ですね。

問題

 10 進法における  \displaystyle 2022^{2022^{2023}} は、 \displaystyle 2022^{2022^{2022}} - 2022 進法で  k + 1 桁の数

 
\overline{a^{k-1}\dots a^{1}a^{0}}

と表されるとします。このとき、 x k 次方程式


a_{k}x^{k} + \dots + a_2 x^2 + a_1 x + a_0 - 1 = 0

の相異なる実数解の総積を  10 進法で求めてください。

考えたこと

まず問題の見た目がイカついですよね。 \displaystyle 2022^{2022^{2022}} - 2022 進法と言われても、普通はいきなりイメージすることは難しそうです。こういうときは、ひとまず小さい数で試してみるのがよさそうです。

今回の問題は、一般化して考えると、 n = 2022 として、 \displaystyle n^{n^{n+1}} \displaystyle n^{n^{n}} - n 進法で表すとどうなるかを考えるものと言えます。

そこで、まず簡単な場合として、 n = 2 の場合を考えてみましょう。


\begin{align}
2^{2^{3}} &= 2^{2^{2} \times 2} \\
&= (2^{2^{2}})^{2} \\
&= ((2^{2^{2}} - 2) + 2)^{2} \\
&= (2^{2^{2}} - 2)^{2} + 4(2^{2^{2}} - 2) + 4
\end{align}

となります。よって、問題文中の  x の方程式は、


\begin{align} 
x^{2} + 4x + 4 - 1 &= 0 \\
(x + 2)^2 &= 1
\end{align}

となります。

一般の  n の場合

 n = 2 の場合の結果から、一般の場合の  x の方程式は


(x + n)^n = 1

となるのではないかと予想が立てられるでしょう。実際に計算して確かめてみましょう。


\begin{align}
n^{n^{n+1}} &= n^{n^{n} \times n} \\
&= (n^{n^{n}})^{n} \\
&= ((n^{n^{n}} - n) + n)^{n} \\
&= (n^{n^{n}} - n)^{n} + {}_{n}\mathrm{C}_{1} n (n^{n^{n}} - n)^{n-1} + {}_{n}\mathrm{C}_{2} n^2 (n^{n^{n}} - n)^{n-2} + \dots + n^n 
\end{align}

より、 \displaystyle n^{n^{n+1}} \displaystyle n^{n^{n}} - n 進法で表したとき、 n + 1 桁の数となり、


\begin{align}
a_{n} &= 1 \\
a_{n-1} &= {}_{n}\mathrm{C}_{1} n \\
a_{n-2} &= {}_{n}\mathrm{C}_{2} n^2 \\
&\vdots \\
a_{1} &= {}_{n}\mathrm{C}_{n-1} n^{n-1} \\
a_{0} &= n^{n}
\end{align}

となります。よって、問題文中の  x の方程式は、

 
x^{n} + {}_{n}\mathrm{C}_{1} n x^{n-1} + {}_{n}\mathrm{C}_{2} n^2 x^{n-2} + \dots + {}_{n}\mathrm{C}_{n-1} n^{n-1} x + n^{n} - 1 = 0

となります。よって、二項定理を使うことで、

 
(x + n)^n = 1

が導かれます。予想が示されました!

最後は  n = 2022 として、方程式  (x + 2022)^{2022} = 1 の実数解を考えます。 2022 は偶数ですので、求める実数解は

 
\begin{align}
x + 2022 = \pm 1 \\
x = -2021, -2023
\end{align}

となります。

以上より、最終的な答えは  (-2021) \times (-2023) = 4088483 です!

 

感想

分かるとスッキリする問題ですね! この問題のポイントは、


n^{n^{n+1}} = n^{n^n \times n} = (n^{n^n})^n

と式変形する部分でしょうか。ここができれば、 \displaystyle n^{n^{n}} - n を括り出す発想が自然に浮かぶ気がします。

似たような式変形は「Fermat 数がすべて互いに素であること」を証明する場面でやったことがありました。これも面白いので、ぜひやってみてください!


 m, n を相異なる正の整数とする。

 \displaystyle 2^{2^{m}} + 1 \displaystyle 2^{2^{n}}+ 1 が互いに素であることを示せ。


とくに、この事実から素数が無限にあることの証明も得られますね。